気品と優雅さ。

ハグロトンボ 〜 橋口昆虫少年譚 2

100708(木)晴れ曇り 家の裏庭の草刈りをやっていたら、黒いものが何処からともなくひらひらと視界に入って来た。「…!!!、アレに違いない!」思わず草刈り機のエンジンを止めて確認すると、果たして、アレ、ハグロトンボだ。

わぁ〜久し振りに観る。思わず機械を側にうっちゃって、常備しているカメラで姿を追う。その飛び方は敏捷でもなく優雅な落ち着きがあるのだが、静止姿を狙っても中々近づかせてくれない。『ナニ?、私を、撮ろうっていうわけ? 貴様が? この私を? アハハハハハ〜』という感じか…。近づくと逃げる、諦めようとするとまた飛んで来る、まったく遊ばれてる感じだ。「ねえ、お願いです。貴方様のその美しいお姿をカメラに収めさせて下さい。」マジにそうイメージすると、あららどうだ、カシワの葉っぱに、すごくいい感じで、ポースを決め、微動だにしなくなった。

 

「あ、ありがとうございます!、わぁ〜綺麗な体ですね〜」数回シャッターを切ってもそのままだ。「素敵な写真にしてくれよ、頼んだよ…」そう云われた気がした。見えない約束を守ろうと思う。

羽黒蜻蛉、(学名:Calopteryx atrata)カワトンボ科のトンボ。美しい金属光沢深緑色がある     の      は雄。黒の翅との色合いが格調高い。主に木陰や水辺に複数でいること多し。美しいポーズ!
羽黒蜻蛉、(学名:Calopteryx atrata)カワトンボ科のトンボ。美しい金属光沢深緑色がある の は雄。黒の翅との色合いが格調高い。主に木陰や水辺に複数でいること多し。美しいポーズ!

 

             蜻蛉捕りの日々。

 

 

少年の頃の憧れの蜻蛉は、やはり、鬼蜻蜓(オニヤンマ)と銀蜻蜓(ギンヤンマ)だった。ところで、この蜻蛉や蜻蜓という漢字は実に美しい日本語だと思う。先人の感性は凄い。

 

どちらも通常の蜻蛉より一回り大きく、何時も何処でもいるというものではない。何事も出会いが大事なのだ。このうち日本の蜻蛉の中で最大の鬼蜻蜓は、夏の夕方、田舎道や庭の上、約1、5m辺りをまっすぐ行ったり来たりしている事がある。これが、昆虫少年にとっては千載一遇のチャンスだ。

 

夕方に現れた蚊などを食べる為に同じ所を回遊しているので、捕虫網で捉えやすい。どうかしたら、麦わら帽子でも取ることが出来る。最初に撮った時の興奮は今でも覚えている。その長い胴の黒と黄色のツートンカラーと緑色の大きな複眼。そして、噛まれたらかなり痛い大きな顎。乾いた大きな透明の翅。体には温もりがありびくびく律動している。まさに生きているという実感。捕まえた事が嬉しく、あたりの兄姉に得意げに見せた記憶がある。

 

銀蜻蜓は、鬼蜻蜓より捕るのは難しい。水辺や堤のかなり上空を飛んでいる事が多いからだ。その姿、特に雄は、まるで夏の里山の風景を転写したような美しい空色と黄緑色、そして少し茶色の縁取りが入った透明な翅を持つ。蜻蛉の中でも最も美しいのではないかと思う。ライトな色合いが敏捷な飛び方に似合っていて素敵だ。

 

折からの午後の日射しを浴びた入道雲を背景に、夏空の高い所を飛ぶ銀蜻蜓は、時折その翅がキラキラ反射する。中々捕まえにくく、橋口昆虫少年には憧れの眩しい存在。ただただ、口を開けて夏空を見つめるばかりだった。

 

 

「その蜻蛉は捕ったらダメだよ…、ご先祖様がそれに乗ってやって来るのだからね…」

 

毎年お盆が近づくと、祖父母や近所のお爺さんおばあさん刈ら等、誰彼となく言われた。それが猩々蜻蛉(ショウジョウトンボ)だ。

 

この蜻蛉のオスは、鮮やかな真っ赤な色をしている。このあたりでは猩々蜻蛉は、しょうろう(精霊)蜻蛉と呼ばれることが多い。真夏の炎天下、この蜻蛉の強烈なカドミウムレッドの色を観ると、頭がクラクラしそうだった。「あの蜻蛉は捕っていけないのだ…、ご先祖様が乗っているのだ…、お盆の間、虫捕りはやっていけないようだ…」

 

まさに何か畏敬の念とでも言うべきものを、少年ながらこの蜻蛉に感じ、不思議と素直に廻りの言うことを聞いたものだった。惑星ハシグチのお年の人々は、橋口昆虫少年に、生きとし生けるものの儚さ、不思議さを、そうやって教えてくれたのだと思う。…感謝!

 

 

本日も御訪問して頂きありがとうございます!良い事がありますように…!

 

 

 

コメント: 3
  • #3

    Neil (月曜日, 23 7月 2012 20:06)

    Hi there! This post couldn�t be written much better! Reading through this article reminds me of my previous roommate! He always kept preaching about this. I most certainly will forward this post to him. Fairly certain he�ll have a good read. Thank you for sharing!

  • #2

    planetary-n (金曜日, 09 7月 2010 17:36)

    tsuyoshiさん、コメント、まことにありがとうございます! 蜻蛉を捕って残酷な事をやったりもしましたね。子供はイノセントですからね〜。しかし、それらを通じて、生きてる不思議、死ぬ不思議を体感するのですね。子供ながら何か、気付くものですね。そういう五感全てを使った体験が凄く良かったのではと思います。 又夏がやって来ますね。さて、懸案の、『第一回Byarkanne Hills 星空音楽祭〜ケンタウルスの夜に!』(勝手にネーミング!)プロジェクトを密かに進めますかね…面白い企画を募っています。重松清著『カシオペアの丘で』ほど重くはなく、ゆるい感じでやれたらと思います。

  • #1

    tsuyoshi (金曜日, 09 7月 2010 09:18)

    おはようございます。よく撮れたね。この時期なんだね~!確かにいきもなのにあのメタリック感は不思議ですね。鬼ヤンマのあのビクビク感と温もり、遠い記憶の中に思い出しました。よく糸を尻尾に結んで、逃げないように部屋の中で飛ばして遊んだ記憶があるね。はやいもので、前回帰省してから半年が過ぎてしまいました。あと一月ほどで、再会できること楽しみにしてます。よろしくお願いします。                    tsuyoshi