原初の故郷を訪ねて 〜 三原山-1

伊豆大島冬旅録 2010 その3

 

 

 

 

伊豆大島地図1 

伊豆大島地図2

 

2010年12月22日(曇)今日は、伊豆大島島民に親しみと畏怖の念で大事にされているという、御神火、三原山に登る。元町港近くから、見上げる外輪山を御神火スカイラインを通って車で一気に山上へ。眼下には元町港、そしてそのまま視線を上げると、群青色の海に白い波頭が立ち、伊豆半島の天城山や下田あたりまでが見える。標高約700m位登ると火口展望台の駐車場だ。そこからのあたりの海の眺めは素晴らしく、 北西正面にはうまく行くと富士山が見える。

その場所からほんの少し歩くと左側、南東方向の視界が一気に開け、いきなり広大なカルデラの風景が眼前に広がる。冬の枯れ草のせいか、まるでアフリカのサバンナのようだ。何処か日本ではない感じもする。そしてその真ん中に、御神火と呼ばれるに相応しい、形の美しさと原初の威厳を漂わせた三原山が堂々と鎮座している。

展望台からの距離感が程良いのか、全体像が良く判る視界で自分は言葉を失う。「うわぁ~~ おおおおぅ~」言葉にならない声が出る。山を見るだけで何故感動するのか?。もともと感動しやすいタイプ?なのかもしれない。自分はたぶん広大な自然を見るのが好きなのだと思う。何故だか良く判らないが。四国遍路の時もそうだったが、光の関係で山襞の陰影が綺麗に見える山々を見ると、それは山という物質、というより何か別の、古い意識体というような感じがして、畏敬の念ともに遠い懐かしさのようなものを感じるのだ。何時までも見ていて飽きない。

口を開けたまま、相変わらず訳のワカラナイ奇声を上げる私をほっときつつ、Rさんは、まるでシャーマンのように、カルデラのサバンナ?草原地帯を慣れた足取りで三原山火口丘に向かって進む。シャーマンRさんの案内で噴火口を一周トレッキングすることになったのだ。

                   
             御神火三原山


三原山は、データによると、標高758m 、1777年、江戸時代、安永の噴火で誕生した、山頂のカルデラ内に鎮座する中央火口丘だ。頂上部に直径300m、深さ200m以上の火口がある。伊豆大島では約2万年前という遥かな昔から現在まで、定期的に100回前後の大噴火が起こっているそうで(BIGLOBE百科事典より)、何とも歴史深い火山島のようだ。


ふと気がつくと、平日とはいえ、幾人か居た観光客は何時の間にか居なくなった。贅沢にも国立公園の三原山、2人でほぼ貸し切り状態だ。「ほら、◯◯、(私の名前)アシタバだよ」シャーマンRさんが指さす道の畦には、まるでただの雑草のように、アシタバが元気に生えている。「わぁ~すご~~い!こんな所で、こんなに元気!」火山帯という過酷な環境なのにもの凄い生命力だ。

アシタバ(明日葉)は、伊豆諸島及び伊豆沿岸に自生する純日本産、いにしえの縄文時代から在るセリ科の多年草だ。非常に生命力が強く、不老長寿の薬草とし て昔から奇跡の植物(八丈島)と呼ばれているそう。植物では、何と、アシタバだけにしか含まれていない、抗菌、抗酸化、抗腫瘍、抗炎症性作用のある「カルコン」というポリフェノールを含んでいるそう。このファイトケミカルを始め、その他多数のミネラルビタミン成分の効能の高さから、医学薬学界で研究されてる薬草である。火山の原野に最初に育つ原初の植物アシタバ、伊豆大島はその故郷でもあるのだ。

 

「…これもこれも、そうかな〜?」「それは違う、ラズベリー(黄イチゴ)だ、もっと良く見なさい」シャーマンRからきっちりご指摘を受ける。感謝だ。シャーマンRは、三原山を自分の庭のように知り尽くしてる。まるで、C・カスタネダの本に出て来る呪術師(シャーマン)、ドン・ファンのようだ。そうではないのかもしれないが、そう、空想するのは楽しい。

 

やがて道は火口へと登って行き、頂上付近にある三原神社を訪れる。シャーマンRが、ここで三原山神社の不思議を指摘する。よく見ると、これまで数々の噴火に遭っているにも関わらず、溶岩流はすべて、何故か神社を回避して流れているのだ。実際観察すると、溶岩は神社直前で止り2手に別れて流れている。…いやはやである。ここまで来れた感謝の参拝をする。

ここから、私共は三原山の神髄、噴火口を一周する。いつの間にかあたりは、草木が全くない別世界になった。遮るものがないせいか、特有の強い西風があたりに吹き荒れている。「ここは地球か?」まるで、『デューン/砂の惑星』のようだ。

やがて、ゴジラの故郷である噴火口が見えて来た。ご存知の方も多いかと思うが、ゴジラは、そもそも伊豆大島がモデルの「大戸島」の伝説の怪獣だ(『ゴジラ』1954年。そして平成のゴジラ』(1984年)では、この三原山噴火口に帰り、『ゴジラvsビオランテ』(1989年)では、再びこの噴火口から復活する。ゴジラも結構忙しい。伊福部昭の、あのテーマ曲が地鳴りとともに聴こえて来そうだ。

 

噴火口は九州が誇る阿蘇山でも見た事あるのだか、周囲のロケーションも含め三原山の方が断然!原初的のまま残されていて迫力がある。何やら強力な磁場エネルギーが立ち上がっていそうで、思わず「おおお~~ウウ~~」と、声にならない雄叫びを上げる。「 おお~い、ゴジラぁ~元気かぁ~」とは言わなかったが、時折突風にも煽られるせいもあり、思わず雄叫びが出る。

「クうう~おわぐい~、ちょ~オ、きょえ~~~。ワぎゃ~」など、もう~すっかり何かが壊れて、叫んだり呻いたりして一周した。シャーマンRも、時々雄叫びを上げたり、アニメの歌を歌ったりしてた、「天才バーカボン、バーカボン!ボン!」一体どうして、シャーマンRはこんな歌知ってるのか? ワケわからなイ、国立公園2人で貸し切って、誰もいないことを良い事に雄叫びまくり、感情爆発!!させ、スッきり気持ち良くなった私共だった。

今になって思えば、あれはきっと御神火三原山のエネルギーに、私共の意識の何処かが交差したのだと思う。ダイナミックでうねるように湧き上がる力を確かに感じた。「自然はもともとダイナミックなのだ。お前もその一部だ。それを自分に許しさえすれば…」御神火三原山から、そう言われた気がした。

その後、1986年の山腹噴火口を廻り、三原山温泉の露天風呂で、三原山の絶景を見つつ夕闇から満天の夜をゆっくり過ごす。生きてて良かった。至福の時間だった。

 

(その3、終わり 次は三原山-2、「裏砂漠」トレッキング!)

 

下のリンクをクリックし音楽を始め、元の画面に戻り、スライドショーをお楽しみ下さい。尚、画像の幾つかはR氏撮影。感謝 ! 

 

 三原山 -1  BGM : 『Only Time Will Tell You』 / Mike Oldfield(1994)

本日も御訪問ありがとうございます。良い事がありますように…!

 

                        (その4へ)

 

 

 

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