馬場﨑研二さんのこと。

注): ▼ひとつ前のブログに関連しています。

 

馬場﨑さんの人生を知ると、ジェームス・ヒルトン著の失われた地平線』の主人公、コンウェイや、サマセット・モーム著のかみそりの刃』の主人公、青年ラリーを思い出した。

両作品とも映画化もされているので、それを観たり原作を読まれた方はお判りだと思うが、どちらの物語にも、ヨガの導師、不老不死、理想郷(シャングリ・ラ)等、西洋物質文明から見た、インド・ネパール(チベット)精神世界への憧憬が、主人公を通じて描写されている。

そんな小説の主人公のような人が実在しているなんて…。
馬場﨑さんは、若い時、インド放浪の旅で、チベット・タンカという超細密彩色仏画に魅了された。その後、タンカの素晴らしい師と出会われて、その文化と技法を伝授される。以後30年以上にも渡り、インドでタンカ絵師として生きてこられている。日本に帰国されたのは近年だ。

自伝的著作異境』日貿易出版)では、カトマンズでのタンカとの強烈な出会いや、余りに美し過ぎる町ダラムサラでの、運命的な師との出会いのエピソードが、高度1800m ヒマラヤを臨む高地にある、簡素な馬場﨑さんのアトリエの写真、老僧侶たちの瞑想的な写真と共に紹介されている。まさにここは「シャングリ・ラ」ではないのか…? 


『近頃の私は、この世界で起こること出来事に対し、偶然というものはないのではないかという気がするようになった。そしてものごとすべてに対し、起こるべくして起こった、成るべくして成った。このことを理解する上で、私は因縁という仏教の方程式を当てはめる。これは、まだ短い人生ではあるが、私自身の経緯を振り返ってみて、そう考えざるを得ないことが余りに多く、この方程式を用いるとそれが容易に理解されるからである。』
                 (『異境』- P28より )

 


ご自身が著作でそう語られるとおり、この方はもう、今生の人生、生まれる前からチベット仏教のタンカ絵師になる!と強く決めて来られたのだと思う。師と出会われた時、師の大きな笑顔があったと、本には記述があるのだが(P28)、 それは「…おおう、約束どおりやって来たね、おまえを待っていたよ…」と、そういう時空を越えた再会の笑顔だったに違いない。
 
そう思う根拠のひとつは、馬場﨑さんの持つ天性の楽天性と類い稀なる穏やかさだ。それは少し大げさかも知れないが、特別な神の恩寵を受けた人、としか言いようのないものがある。側にいて話を聞いてると、人生はこういう風に、もっと大胆に、楽しく生きて大丈夫なのだよ、的オーラが心地良く伝わって来る。なんだかこちらもスゴク楽しくなるのだ!

自分も含め、日本で生きてると、何かにいつも駆り立てられてるような、早口でまくし立てられるような、このままではイケナイ的焦燥感に襲われがちだが、こと、馬場﨑さんといると、「何それ?」てな感じ。暢気というのでもない、どこか悠然とした感じ、そう…そこにはチベットの峻厳で聖なる山々のように、何か不動の大いなる精神が感じられる。


馬場﨑さんが本格的にインドに行かれた頃、国内では、平河出版から、季刊雑誌『The Meditation(ザ・メディテーション)』が発売された。「瞑想」をテーマにしたコアな専門雑誌だった。何といっても表紙が横尾忠則の斬新なデザインということで、当時は相当なインパクトがあった。時代的には、学生運動が解体後、しらけムードになった'70年代中期以降で、初めて「精神世界」という言葉が出て来た頃だったと思う。

『The Meditation』には「精神世界の本ベスト800」や「音楽と瞑想」等の特集があり、カラーグラビアも多く、当時としてはマニアックなのに豪華な雑誌だった。なので自分は思わず購入。そして実は、今でもその雑誌を所持している。曼荼羅ポスターが附録についていた時があり、そこで自分は初めて、印刷ながらチベット・タンカを知ったのだった。チベット仏教の宇宙観が表現されているのだろう、細部の詳しい意味は皆目不明だが、その、あまり類を見ない図像と原色に近い鮮やかな色合いは、子どもの頃に夢の中で見た世界を思わせて目眩がしそうだった。

馬場﨑さんのご自宅を訪れる幸運に恵まれ、既に完成した作品や、貴重な作成中の作品も見せて頂いた。(Sayuさん、その節はどうもありがとう!)それはかつて見た複製画にはない、本物の重さと深さがあった。写真撮影も許可を頂き、細密画を相当アップで撮る。それでもしっかり細部まで書かれてる完成度の高さにただならぬものを感じた。

馬場﨑さんの人生がインドと相当なご縁があることを思わせるもうひとつの根拠は、そのお名前に隠されている。名は体を表すというが、「馬場﨑研二」という文字の中に、既に聖なる名「BABAJI (ババジ)」= (インドの聖者、不老不死、シヴァ神の化身とも言われる。) のホーリーネームが配置されているからだ。

 

以上、思い込み以外の何ものでもない、私の馬場﨑研二さん観デシタ。馬場崎さん、失礼があったらお許し下さ〜い!

 

馬場﨑さんから、インドやチベットの話を伺う度に、日本がいかに恵まれているかを知る。その他に語られる外国の話も興味が尽きない。また話を伺えたらと思う。

 

 

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本日のご訪問ありがとうございます。良いことがありますように!

 

 

 

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コメント: 1
  • #1

    planetary-n (日曜日, 04 5月 2014 15:08)

    sayuさん、書き込み、ありがとうございます!

    自分の稚拙なブログでも、何かお役に立てたようで、こちらも大変嬉しいです。本当はもう少し早く告知し、それなりに沢山の皆さんに観て頂く機会をセットしかったのですが、日々の用事にかまけて、ぎりぎりになってしまいました。

    それでも行動を起こして良かったです。
    インターネットは、こんな日本の西果ての、しかも陽も良く当たらない山の中からでも、一個人で全世界に発信可能。それなりに何らかの影響を与えることが出来るというのが面白いですね。ある意味驚異的でもあります。ネットというメディアがなければ、こんな夢のようなことは出来ませんでした。(少なくとも'80年代までは。)今後も良い意味で、その特性を生かしたいところです。

    個展会場が神田、お茶の水というもの良かったですね。東京を知ってる人は皆好きな街だと思います。自分も、世界最大の古書街、神保町はもちろん、三省堂本店、ディスクユニオンお茶の水店(レコードの時代ですが)、丸善、画材のレモン画翠等、大変思い出多い街です。

    馬場﨑さんには、直接の利益に結びつかなったかとは思いますが、この友人たちの背後には、またたくさんの素敵な友人たちがいることと思います。そちらに繋がっていけば、いつかは良い話に結びつくのでは?と想像します。

    またこちらで、馬場﨑さんのお話を、sayuさんと共に伺えたらと思います。ありがとうございます。